第10回定例会 3.11から10年、「東北」の過去・現在・未来を語る
開催日:2021年3月27日(土)
【講師と演題】
・岩手県大槌町|一般社団法人槌音代表理事 臺隆明さん
「被災地の子供達と音楽 ~次の世代に繋ぐ~」
・宮城県石巻市|合同会社巻組代表社員 渡邊享子さん(2021年5月より株式会社巻組代表取締役)
「アート思考で開く人口減少地の未来 ~石巻から始まる新しい空き家ビジネス~」
・福島県郡山市|特定非営利活動法人しんせい理事長 富永美保さん
「福島復興とSDGs ~誰ひとり置き去りにしない福島を目指して~」
NEXT DOOR第10回定例会は、東日本大震災発災から10年を迎えた2021年3月に開かれました。コロナ禍において記憶の風化も懸念される中で、東北三県において活動されている方々の「生の声」をお聞きする場を設けました。
臺さんは、地元大槌町でブラスバンド少年団の団長として活動していました。震災で自宅は全壊しましたが幸いご家族は無事で、被災後は「槌音プロジェクト」を立ち上げ、日本各地や海外からの音楽を通じた支援の受入れや交流を行なっています。多くの活動を通じて参加者の視野も広がり、「自分たちの経験を音楽で伝えたい」とプロの音楽家を目指す子供達も生まれています。震災で犠牲となり我が子の成長を見届けられない方々、親を亡くした子供達が身近にいる中で、自分の命は生かされたものだと感じている臺さんは、これからも次の世代に繋いでいくための活動を大槌で続けていきます。
渡邊さんは、大学院生として就職活動中に新宿のビル街で被災しました。その2ヶ月後、縁あってボランティアとして訪れた石巻市で、被災した地元商店主達の「自分たちの人生は自分たちで何とかしなければ」との姿勢に衝撃を受け、地域経済の再生に関わりたいと石巻に移住し起業しました。震災後の移住者に向けた古い空き家のリノベーションから活動を始め、復興が進むにつれて急増した、一見無価値な不動産である空き家とクリエイターとを結び、アートの持つ「ネガティブをポジティブに転換する力」で地域資源を価値化しています。大量生産大量消費ではない真に持続可能な暮らしの実現を石巻から目指します。
富永さんは、福島県内陸部の郡山市で、沿岸部からの原発事故避難者のための「交流サロン」を開設しました。その後NPO「しんせい」を設立し、避難してきた福祉事業所との協働プロジェクト(全13事業所)を発足。大手企業やNPO等の支援を受けて、菓子や布・紙製品を製造し、ネット販売も行なっています。新たに2019年を復興事業からの自立を目指す第2創業期と位置付け、ブルーベリー栽培等を行なう「山の農園」を開きました。障がいを持つ人と一緒に誇りある仕事を創出し、原発事故で多大な影響を受けている福島だからこそのSDGsとして、持続可能な「小さな手作りの未来」を築く実験に挑戦しています。
貴重な講演をいただくことで、参加者がそれぞれの3.11に向き合える得がたい時間となりました。深い感謝と共に講師の皆様方の今後ますますのご活躍を心よりお祈り申しあげます。(世話人藤井)