第21回定例会 東日本大震災を『伝承』する ~現地から伝える今とこれから~

NEXT DOOR世話人

開催日:2022年2月27日(日)

【講師と演題】(登壇順)
・武田真一さん(3.11メモリアルネットワーク代表、宮城教育大学「311いのちを守る教育研修機構」特任教授)
「東日本大震災の伝承の現状と3.11メモリアルネットワーク」
・神谷未生さん(3.11メモリアルネットワーク副代表、一般社団法人おらが大槌夢広代表理事)
「岩手県大槌町から 震災伝承の活動事例報告」
・永沼悠斗さん(3.11メモリアルネットワーク理事、大川伝承の会
「宮城県石巻市から 震災伝承の活動事例報告」
・青木淑子さん(3.11メモリアルネットワーク副代表、特定非営利活動法人富岡町3.11を語る会代表)
「福島県富岡町から 震災伝承の活動事例報告」

NEXT DOOR第21回定例会は、昨年3月の第10回定例会に続き東日本大震災をテーマとして取り上げました。震災発災後11年を迎える中で、その記憶をどう伝承し地域の再生と将来に向けた備えに繋げるのかについて、岩手・宮城・福島の3県を中心に活動を展開する「3. 11メモリアルネットワーク」(以下「311MN」)の役員4名をお招きし、語っていただきました。

武田さんは震災時、河北新報社報道部長。地元仙台市に本社をおく新聞社として、震災前に何かできたのではとの大きな悔恨と反省があると言います。震災伝承の目的は「体験と教訓の共有」であり、311MNは、同じ犠牲と混乱を繰り返して欲しくないとの思いで活動する各地の語り部を草の根のネットワークとして支えています。コロナ禍では、現地来訪者激減に対するオンライン化支援等を行なっています。伝承施設の整備は進んだものの、これからの伝承において最も大切な視点は、「震災を語り継ぐのは誰か」であり、「皆で語り合って共有することで誰でも伝承の主体になることができる」とのメッセージをいただきました。

神谷さんは名古屋市の出身。看護師として途上国での医療チームに参加。震災時はベトナムで活動中でした。日本に帰国し国際NGO職員として岩手県大槌町に派遣され、その後移住。町長他多くの幹部職員が亡くなり行政機能が麻痺した大槌町の現実から、復興期に町民が直面した課題について議論する「決断のワークショップ」や、震災時の「疑似体験プログラム」を開発しました。「震災を学ぶ」のではなく「震災から学ぶ」、「あなただったらどうする?」という、震災を「自分ごと」として捉えてもらう研修に力を入れています。そして、究極の防災とは、日々の一瞬一瞬を大切にすることであり、自分の生き方を学ぶことであると話されました。

永沼さんは宮城県石巻市大川地区出身で、震災時は高校1年生でした。震災によりご家族を失い、自宅は流失しました。アイデンティティの喪失と、なぜ自分が生かされたのかとの思いに悩んだと言います。その中で、生かされた意味は震災の体験や教訓を自分の言葉として発信し社会に還元していくことだと考え、語り部活動、「大川地区『記憶の街』模型復元プロジェクト」、「伝承活動に関わる若者のネットワーク化プロジェクト」等を始めました。永沼さんは語り部をする際に、「皆さんの大切なものはなんですか」と問いかけ、「その大切なものが突然失われるのが災害なのです」と伝えておられます。

青木さんは高校教諭として長く奉職し、教員生活最後の4年間を福島県立富岡高等学校校長として過ごしました。原発事故により全町民避難となった富岡町役場は郡山市に移転。退職後郡山市に住んでいた青木さんは、富岡の人とともに歩みながら「自然災害+原子力災害」という「複合災害」を伝えることを決意し活動を開始。2017年4月富岡町の避難指示一部解除後には、富岡町に移住しました。人の心に届く話をするには表現力が必要であり、「表現塾」、「演劇キャンプ」、「世代間交流会」による表現力育成に取り組みました。語り伝えることが復興の原動力であり、これからさらに表現活動を盛り上げたいとお話しくださいました。

震災の記憶の風化、コロナ禍、語り部の高齢化、被災地での人口減少等多くの課題がある中で、各講師の皆さんのこれまでのご活動に感銘を受けました。「話し手と受け手の共同作業」としての伝承の重要性を強く認識すると共に、私たち一人ひとりが、「自分ごと」として震災を伝え行動に結びつけていかなければ、との思いを深めることができました。(世話人藤井)