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  • ダイバーシティ実践論
2019
4/15

ダイバーシティ実践論1「支援の対象ではなくパートナーとして」

講師: 藤本光浩( 株式会社マジェルカ 代表取締役)
吉祥寺駅から10分足らず。昔ながらの商店と個性的なショップが混在するエリアにあるお店「マジェルカ」。足を踏み入れると鮮やかな色のバッグやカード、吹きガラスが並んでいます。これらを作ったのは全て障がいのある人たち。マジェルカは福祉施設で作られた魅力的な雑貨を扱うセレクトショップです。

代表の藤本光浩さんがマジェルカを始めたきっかけは、2つの「もったいない」です。企業で商品企画を担当していた頃、藤本さんが奥多摩で出会った間伐材のおもちゃ。障がいのある人が作ったものでした。「こういうものも作れるのか」。誤解を恐れずに言えば、と断った上で、藤本さんは当時の正直な気持ちを語りました。調べてみると、販売したい商品はまだまだ沢山ありました。障がいのある人が作るモノの魅力が伝わっていない→もったいない!障がいのある人に魅力的なモノを生み出す力があることも知られていない→もったいない!!「知ってよかった」と感じるモノと出会う場を作ろうと事業を始めます。

ウェルフェア(福祉)とフェアトレード(公正な取引)をかけた造語「ウェルフェアトレード」がお店のコンセプトです。ボランティアをするような福祉に関心の高い人だけではく、関心のない人にも「買う」という行為を通じて気軽に福祉との接点を作る。正当な価格で販売し、利益は福祉施設にも還元する。正当な価格で売れたという経験は作り手の自信にもつながります。

マジェルカにとって、作り手である障がい者が通う施設は支援の対象ではなく、ビジネスパートナーです。出来たものをただ売るのでなく、商品の満足度を高めるための提案や注文もします。施設からは「作り手に負担はかけたくない」という反応がある一方、「やれるだろう、と思ったことしか彼らにやらせていなかったと気づいた」という前向きな声も生まれています。

2017年からは、販売業務にも障害のある人が関わるようになりました。様々な人と接し、臨機応変の対応が求められる接客業。通常は発達障害や精神障害のある人は避ける業種です。でも「向いてなくてもやりたいことってありますよね!」と藤本さん。ここでの経験を機に引きこもりを脱し、専門学校に行くことを決めた人もいるそうです。

マジェルカは、雑貨を通じて買い手が障害のある人と繋がる機会だけでなく、障害当事者である作り手や売り手の自信、社会と繋がる機会も生み出す場だと感じました。

 

講師プロフィール

株式会社マジェルカ 代表取締役

藤本光浩

民間企業での商品企画・販売企画などを経て、あるきっかけから作業所製品と出会い、「買ってもらう」ではなく「買いたくなる」付加価値の高い製品としての可能性を感じ、2011年に作業所製品のみを集めた雑貨のセレクトショップ「マジェルカ」をオープン。2017年から就労継続支援A型事業所として、ショップ運営でも障がい者が活躍出来る場に。