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2020
11/16

ケア原論11「観察論からクリエイティブ介護論」

講師: 飯田大輔(社会福祉法人福祉楽団 理事長)
前期の講義に続き、福祉楽団・飯田さんに、ナイチンゲールの思想に基づいた「ケア」についてお話しいただきました。はじめに、受講者からの質問や感想を含めた前回の振り返りを行い、今回はケアのクリエイティビティや地域性に焦点を当てた授業が展開されました。

ケアという仕事には、多様性への理解やネットワークを形成する「クリエイティブな能力」が求められます。そのほとんどは修練と試行錯誤であり、労働とも言えるものです。また、これからの社会は、従来の1対1でのケアに加え、病院や施設をこえた地域ケアが必要となってきます。高齢者の施設だから高齢者だけ、ではなく、障害のある人、子供たち、いろいろな人が交わるような場をつくる、コミュニティや関係性を考える視点が大切です。

講義の後半は、実際に飯田さんが行っている事業をいくつかご紹介いただきました。その中の1つが「恋する豚研究所」です。1階が豚肉加工工場、2階がレストラン(しゃぶしゃぶ/ハンバーグ)になっていて、休日には待ち時間ができるほどの賑わいを見せるそうです。私たちがしゃぶしゃぶを食べる時、生きた豚が豚肉になるまでを想像するでしょうか。飯田さんは、消費者が食肉加工のプロセスを知らないまま消費行動をするのはフェアではないと考え、プロセスを発信していこうと思い「恋する豚研究所」を設立しました。この施設は、多くの障害者が働く場でもあります。就労支援の場では、給料よりも居場所を提供しているだけになってしまっているケースも多く、作業所の課題と飯田さんは考え実践しています。

仕事を分解し、この作業なら障害者や認知症の人でもできる、と切り取っていけば、誰でも働ける場をつくることができます。例えば、サツマイモを重さで分ける作業をするとき、数字を認識しなくても済むように色で表示されたはかりを使う、という工夫だけで誰でも仕分け作業ができるようになります。

また、障害を持つ人や高齢者だけではなく、帰る場所がない少年院出所者や精神依存のある人とどのように向き合ってきたのかについても、日本の社会保障が進む中に依然としてたくさん存在する「隙間」にふれつつお話しいただきました。飯田さんは「仕事をつくる仕事」をしています。このような様々な取り組みから、ケアと言っても単純な介護だけではないことがイメージできました。これからは人と人との繋がりを問う時代です。

講師プロフィール

社会福祉法人福祉楽団 理事長

飯田大輔

1978 年千葉県生まれ。東京農業大学農学部卒業。日本社会事業学校研究科修了。千葉大学看護学部中途退学。
千葉大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程修了。(学術修士)
2001 年、社会福祉法人福祉楽団を設立し、特別養護老人ホームの生活相談員、施設長などを経て、現在、
理事長。2012 年、株式会社恋する豚研究所を設立、現在、代表取締役。
現在、千葉大学非常勤講師、京都大学こころの未来研究センター連携研究員、ナイチンゲール看護研究所研究
員。東京藝術大学非常勤講師。
介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士。