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2022
9/6

ARTs×SDGsプラクティス③「欧州サーキュラーエコノミーに探る日本の可能性」

講師: 安居 昭博(Circular Initiatives & Partners 代表)
第3回では、サーキュラーエコノミー推進のためのプラットフォームCircular Initiatives&Partnersを立ち上げられたサーキュラーエコノミー研究家の安居昭博さんにお越しいただきました。安居さんは⽇本とヨーロッパ間でのサーキュラーエコノミー分野の橋渡し役を務められているほか、京都のロス食材から作られたシュトレンブランド「八方良菓」、生ごみや落ち葉などの悩みの種を「完熟堆肥」として仕立て地域の農家に供給するサーキュラー・コンポストプロジェクト、産業廃棄物を地域で共有し資源化するエシカル・フードロス・アライアンスなど日本でも様々なプロジェクトを展開されています。

サーキュラーエコノミーとは、経済と環境との両方へのメリットがあるように考案されたエコノミーモデル。従来のリニアエコノミー・3Rエコノミーの考え方とは違い、設計・デザインの段階で「廃棄」を前提としないのが最大の特徴で、「誰かの悩みが誰かの資源になる」「どうしたら捨てさせないで企業に戻すことができるか?」という視点をもっています。輸入のリスク抑制や廃棄物抑制、従来とは異なるビジネスモデルなどの手段として近年注目されてきています。

安居さんは、サーキュラーエコノミーのキーとなるものが「芸術の視点」であると言います。廃棄が出ない製品・システム設計をするということに加えて、食べ物であるなら「おいしい」、小売商品であるなら「手にとってみたい」などの「買いたい」と思わせるような工夫が凝らされた事例を多く紹介くださいました。その一例は、ロス食材を活用したアムステルダムのレストラン「INSTOCK」。ここで提供される料理は一流シェフによるもので、そのリーズナブルな価格と美味しさから地域のお客さんに愛される一方、「この町にはこんなにフードロスがあるんだ」と気づく場所にもなっているといいます。

また、サーキュラーエコノミーは地域の活性化につながる、という視点も重要であるとも主張されました。これは製造・修理・再生産拠点が国外ではなく地元に設けられたり、地元材の活用がされたりするケースが多いためです。この動きの背景には、2021年にEUで施行された特定の電化製品についての「修理する権利(right to repair)」に関する規則があります。世界的にもサーキュラーエコノミー推進の機運が高まっているのです。

今回の講義では、サーキュラーエコノミーという観点からどのように芸術が社会に関わることができるか?というヒントを多く示唆してくださいました。発想の転換によって廃棄物を資源として新たに生かしていく道もまた、芸術の視点によってつくり出せるのではないでしょうか。

講師プロフィール

Circular Initiatives & Partners 代表

安居 昭博

1988年生まれ。Circular Initiatives&Partners代表。世界経済フォーラムGlobal Future Council on Japanメンバー。ドイツ・キール大学「Sustainability, Society and the Environment」修士課程卒業。2021年6月「サーキュラーエコノミー実践 ーオランダに探るビジネスモデル(学芸出版社)」出版。2021年、日本各地でのサーキュラーエコノミー実践と理論の普及が高く評価され、「青年版国民栄誉賞(TOYP2021)」にて「内閣総理大臣奨励賞(グランプリ)」受賞。

サーキュラーエコノミー研究家 / サスティナブル・ビジネスアドバイザー / 映像クリエイター。アムステルダムを拠点に50を超える関係省庁・企業・自治体に向けオランダでの視察イベントを開催、これまで1000社以上へ講演会・セミナーを開き日本へサーキュラーエコノミーを紹介してきた。2021年より京都在住。複数の企業へアドバイザー・外部顧問として参画。「トニーズ・チョコロンリー (Tony’s Chocolonely)」を初めとしオランダ企業の日本進出プロジェクトにも参画し、日本とヨーロッパ間でのサーキュラーエコノミー分野の橋渡し役を務める。「サステナアワード2020」にて「環境省環境経済課長賞」を受賞。