現役受講生からのメッセージ(2023年1月 公開講座トークセッションより)

VOICE①
山中翔さん (藝大生)
(東京藝術大学美術研究科学生/2022年度受講/茨城県在住)

アートと福祉をまたいで様々な方々の生き方、考え方を垣間見ることができました
 

①DOORプロジェクトへ参加した(知った)きっかけ
 私は東京藝術大学大学院美術研究科で、美術教育研究室に所属し、日本画の実技制作研究とともに美術を論じることを研究しています。DOORプロジェクトを知ったきっかけは入学時にいただいた「藝大リベラルアーツガイド」です。参加を決めた理由は、美術教育研究室の実施する授業やワークショップの中でDOORとの接点があったことや、自身がこれまで美術教育の場で接してきた多様な人々との交流の記憶から、より様々な社会の在り方や問題意識を直接知る機会であると考えたことです。
 

②印象に残っている講義や実習
 私は他の授業や実技制作との兼ね合いから、講義系の授業のみに絞って履修しました。その中で特に印象的だったのはケアについての基本的な考え方を深く知ることができた「ケア原論」です。私はケアについて教職課程の範囲内で学習を終えていました。しかし実践については教育現場や親族との交流の場において自覚しないままに多くのことを行ってきました。ケアとはなんなのかを原点から見つめなおしていく授業を通して、自分が今まで行ってきたケアの実践について改めて思い起こし、多くの気付きがありました。
 「ダイバーシティ実践論」では、冒険家の荻田康永さんのお話がとても印象に残りました。行っていること自体も常識から外れすぎていて刺激的でしたが、それにも増してその目的意識が自身の制作とも通底しているように思えて興奮しました。
 「人間形成学総論」も印象的な講義でした。講義は普通、講師から知識や体系を教わることが中心になっていますが、人間形成学総論はすでにある自分の生をどう価値付けるかに比重が置かれた内省的で独特な講義でした。講義の合間に行われるディスカッションやワークも、受講者それぞれにとっての意味が大切にされ、受講者同士が自然と深い心の交流に踏み出せる場を創り出していたように感じました。
 その他にも魅力的な講義がありましたが、毎回授業の最後に行われる質疑応答での受講生の皆さんのお話にも印象深い内容が多く、アートと福祉をまたいで様々な方々の生き方、考え方を垣間見ることができたことも、自身の糧になったと感じています。
 

③仕事/生活/学業とDOORプロジェクトの両立について
 学業との両立にはそれほど困難は感じられませんでした。やむを得ず欠席した場合にも動画配信で講義を聞くことが出来ましたので、ほぼ履修したすべての講義内容を消化することができました。
 DOORの講師陣や受講生との集中的な交流は藝大だからこそ整えられている環境であると思います。芸術には専門的に一つを突き詰めることも必要ではありますが、せっかく藝大にいるのであれば、独学ではとても巡り合えないであろう様々な活動や社会の広がりを学生のうちに見渡すことで、自分の制作の意味を社会の中に相対的に見出すことにもつながると思います。
 

(2023年1月16日 公開講座トークセッションより)


VOICE②
原田篤さん 6期生)
(カウンセラー・アートコミュニケーター/2022年度受講/茨城県在住)

仕事や生活へのアプローチもいろいろな角度から取り組めるようになるのではないでしょうか

 

①DOORプロジェクトへ参加した(知った)きっかけ
 取手の駅ビルにある「たいけん美じゅつ場」というところでパンフレットを見たのが最初です。
一昨年に長年勤めた印刷機メーカーをリタイヤし、その後は実家のある取手で、取手市、藝大、JR東日本、アトレの4者連携の「たいけん美じゅつ場VIVA」のアートコミュニケーター(トリばァ2期)として活動しています。そこにパンフレットが置かれていてDOORについて知りました。トリばァの仲間にはDOORの修了生もいて、アートのみならず福祉関係でも活躍されている方がおり、自分も学んでみようと思いました。
また、取手で親を介護していることもあり福祉に興味があったのですが、独りよがりで考えるよりもまず学んで考えるのが良いと思いDOORに応募しました。DOORのテーマは「福祉と芸術」ですが、福祉に芸術がどう関わるのだろうと興味もありましたし、藝大という未知なるものへの興味もありました。

 

②印象に残っている講義や実習
 選択科目として「美術鑑賞実践演習」を選びました。そこでは藝大と東京都美術館のアートコミュニケーター(とびラー)の方々と一緒に対話型鑑賞の講義を受けました。とびラーの方々とも交流し、また藝大生も参加しているのでいろいろ刺激を受けました。模擬の対話型鑑賞会では思い切ってファシリテーター役に立候補し、指導を受けたことは貴重な経験です。
また夏季集中講座として土日に「アートプロジェクト実践論」の講座があったのですが、地元のアートプロジェクトについて知るきっかけともなりました。
他、印象的な講義としては藝大の⼤⽯膏室での実習「DOOR特講:人体デッサン」があります。天井も高く、贅沢な空間での木炭デッサンは楽しい経験でした。
DOORの良いところのひとつには、いろいろな世代の方が参加していることがあげられると思います。藝大生の20代から私のような60代の者まで皆さんと交流できるので、楽しく講義や実習に参加しています。

 

③仕事/生活/学業とDOORプロジェクトの両立について
 今はオンラインで数多くの講義が行われているので、地方にいる方や時間に制約がある社会人の方も参加しやすいのではないでしょうか。
私は定年退職後の参加だったのですが、現役時代にDOORを受講していればよかったなと思うことがあります。仕事へのアプローチもDOORで学ぶいろいろな視点から取り組むことができたのではないかと思っています。
私は現役時代に時間を割いて、産業カウンセラーやキャリアコンサルタント、ハラスメント防止コンサルタントなどの養成講座や資格試験を受けていたのですが、この時工夫して勉強して取得した資格が継続して活かせています。
DOORでの学びもこれからの人生に役立つと思いますので、時間のやりくりなど少し工夫して参加してみてはどうでしょうか。それだけの価値はあると思います。
DOORに参加すると、いつもとはまた違ったアイディアが浮かんだり、仕事や生活へのアプローチもいろいろな角度から取り組めるようになるのではないでしょうか。

 

(2023年1月16日 公開講座トークセッションより)


VOICE③
山根直子さん(6期生)
(医療ソーシャルワーカー/2022年度受講/山口県在住)

あの時思い切ってDOORの扉を開けた自分を褒めてあげたくなるに違いありません

 

① DOORプロジェクトへ参加したきっかけ
 私は自身のがんサバイバーとしての経験を何かの役に立てられないだろうかと思って社会福祉士の資格を取り、現在は医療ソーシャルワーカーとして患者さんの相談対応などを行っています。
 しかし次第に、病院内の患者さんだけでなく、地域や社会に目を向け、自分に何ができるかを考えたいと思うようになりました。何かヒントはないかと、何の予備知識もないままインターネットで検索をするうちに、DOORプロジェクトのHPが目に留まりました。「アート×福祉」そこに私が知りたいことがあるかもしれないと直感しました。なぜなら、私は闘病生活で人生に行き詰りを感じていた頃、ある一枚の絵と出会って思考を転換でき、自分の殻に閉じこもっていた人生から外の世界へと踏み出せたという経験を持っているからです。
 申込みの締切り5日前でしたが、すぐに準備を始め、無事DOORの扉を開くことができました。また、受講するにあたり、地方在住の私にとってオンラインで授業が受けられることは、大きな選択理由であったことは言うまでもありません。

 

② 印象に残っている講義や実習
 私が一番印象に残っている講義は、プログラム実践演習です。「変化するパブリックアート」として、ワールドカップの開催に合わせて行われた「アジア代表日本2022 WORLD PEOPLE CUP」というアートプロジェクトと連携し、応援する国々を題材に陶芸作品を作り展示をするというものでした。
 プログラム実践演習は、選択科目Ⅰの中で唯一オンラインだけでも受けられる講義でした。私は地方在住なので対面授業を受けることは難しいと思っていましたが、東京藝術大学取手キャンパスで行われた対面実習へ思い切って参加してみました。それまではPCの画面越しであった布下先生や受講生の皆さんと実際にお会いでき、一緒に作品を作ったり野焼きをしたりという、貴重な体験ができました。また、受講生同士でそれぞれが持つ思い、経験、情報などを共有できる機会にも恵まれ、オンラインだけでなく対面授業にも参加して本当に良かったと思います。
 さらに私たちの作品がパブリックアートとして、九州国立博物館での展示や東京藝術大学国際交流会館へ設置されるという機会にも恵まれ、作品や私たち自身がどのようにアートプロジェクトへ関わるのかを実感できたことも大きな学びとなりました。

 

③ 仕事とDOORプロジェクトの両立について
 私は先ず、とにかくこの一年は「インプットの年」にすると決意し、そのために時間とお金を費やすと覚悟を決めました。
 DOORの受講開始と同時期に、働き方改革のためなるべく残業をせず定時に帰るよう奨励されたことや、同僚へ「月曜日は早く帰る日宣言」をして協力が得られたことなどの環境に恵まれ、なんとか平日夜間の講義へ出席することができました。しかし、講義に出る時間は取れても、講師の著書を読むなどして理解を深めることまでは難しく、前期後期のレポート作成については締切り間近になって慌てて行うという有様でした。
 振り返ると、いつも何かに追われる一年であったように思いますが、言い換えれば、充実した一年であったとも言えます。大人になってから、このような濃密な学びや、人との出会いが持てたことは、至福と言っても過言ではないでしょう。何年か経ってこの一年を思い返すと、あの時思い切ってDOORの扉を開けた自分を褒めてあげたくなるに違いありません。

(2023年1月16日 公開講座トークセッションより)