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  • ダイバーシティ実践論
2018
12/10

アーティストの活動10

講師: 下河原 忠道(株式会社シルバーウッド 代表取締役)
昨年に引き続き、株式会社シルバーウッド代表取締役、下河原 忠道さんにご登壇頂きました。

”楽しみだけではなく、リスクだってシェアしあうことが、一つのリスクマネジメント”
運営されているサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「銀木犀」の施設内の様子をご紹介から始まりました。普通のサ高住では玄関に鍵をかけ危険のないように管理をするところ、なんと「銀木犀」では玄関に鍵をかけない方針。危険だと言って、なんでも取り上げてしまうと認知症を進めてしまう。サービスと支配は紙一重で、ともすれば無気力化を助長させてしまう危険もあると下河原さんは語ります。

”「役割」がその人らしさを取り戻す”
認知症があるお年寄りも多く「銀木犀」には入居されています。高齢者施設では閉鎖的な空間になりがちなので、「銀木犀」では子供達を呼び込む仕掛けをしています。例えば、駄菓子屋を併設させ、店番を入居者のお年寄りが担当されたり、他にもヨガ教室やピアノリサイタルなど地域の方が積極的に使っていただけるよう、交流が提供できる場づくりをしています。ほかにも認知症があっても働ける場をつくるということで、来年4月からスタートする新事業”仕事付きサービス付き高齢者向け住宅”をつくられるとのこと。認知症でも働ける場のある高齢者施設を展開されています。地域から認知症のある人を分離する社会は、無意識の偏見を生む素地を作ってしまうのではないかと下河原さんは疑問を投げかけます。知る機会がなければ偏見が広がる。認知症や障害のある人がもっと地域に出ていく仕掛けをアートやデザインの力を活用することが大切であると言います。

”VRは偏見を想像力に変えるテクノロジー”
昨年DOORのでも実施されたVR認知症体験会の紹介が後半にありました。認知症も多様な種類があるということで、認知症の症状で幻視が起こるというレビー小体病に着目したVR「レビー小体病 幻視編」は、どのように幻視が生じるかを当事者の視点に立ち、体験し理解を深めるVRです。他にも、患者視点を体験できる「看護教育向け学習VR」や、認知症患者が買い物に行ったらどこでつまずくかを知る「一人で買い物」のVRなど。最後に紹介頂いたのが看取りに関して。人は必ず死ぬが、延命行為ばかりが進歩し、不必要な延命行為に対しての疑問から、高齢者の終末期と救急医療の現場をイメージするVRを作られています。高齢者の視点に立ち、この延命は本人が望んでいるのか、望んでいないのか、という問いを体験者に投げかます。

講師プロフィール

株式会社シルバーウッド 代表取締役

下河原 忠道

下河原 忠道(しもがわら ただみち)
株式会社シルバーウッド代表取締役、一般財団法人サービス付き高齢者向け住宅協会理事。
高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)幹事。
2000年株式会社シルバーウッド社設立。
独自の建築工法の薄板軽量形鋼造(うすいたけいりょうがたこうぞう)システム「スチールパネル工法」を開発、特許取得。
2011 年直轄運営によるサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀」開設。
現在設計中のものを含め12棟の高齢者住宅の経営を行う。
2016年VR認知症プロジェクト開始。