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2021
12/13

ダイバーシティ実践論11「人類進化史から探る人間とその文化の多様性」

講師: 海部 陽介(東京大学総合研究博物館 教授)
 東京大学総合研究博物館教授の海部陽介さんに、人類進化史の視点から見た多様性をテーマに講義をいただきました。

 人類(ホモサピエンス)のDNAを調べてみると、人間は外観や人種、文化の多様性はあるものの種の歴史が浅いので、遺伝子を比較すると他の生き物と比べて遺伝的多様性は少なく、ゲノムレベルではあまり違いがないと海部さんは言います。

 では、人類における多様性とは何なのでしょうか?本講義の中では、人種とは?という問いに対する応答を歴史的経緯から学びました。人種とは、外見の身体形質に基づく人間の生物学的な分類概念ではありますが、様々な人種における分類研究の歴史を確認すればするほど、一つの人種の中にも多様性があり、簡単に分類ができないことが分かります。

 歴史的な人種差別の背景にある概念の考え方についても触れ、講義の最後に、ヒトは、人種や民族によって外見や文化は多様だが、実は遺伝子レベルからみると中身はとても似ている。そのことは、お互い分かり合える余地があるという希望が生まれるということでもある。と強く伝えられました。

 差別は相手に対する無知により生まれます。相手と分かり合うためには、相手の歴史について知り、さらに共有している人類史も含めて知ることが重要だと語られました。

講師プロフィール

東京大学総合研究博物館 教授

海部 陽介

人類進化学者。理学博士。1969年生まれ。
東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。国立科学博物館を経て2020年より現職。
約200万年におよぶアジアの人類史を研究している。クラウドファンディングを成功させ、最初の日本列島人の大航海を再現する「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」(2016-2019)を実行。著書に「サピエンス日本上陸」(講談社2020)、「日本人はどこから来たのか」(文藝春秋 2016:古代歴史文化賞)など。日本学術振興会賞(2012)、海洋立国推進功労者表彰(2021)などを受賞。