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2021
5/31

ダイバーシティ実践論6「声めぐりの旅」

講師: 齋藤 陽道(写真家)
 齋藤 陽道さんは、聾(ろう)者の写真家として活動をされています。今回は、日比野克彦さんと齋藤さんが、時折、手話通訳者を介しつつ図や絵による筆談と手話、ボディランゲージなどを用いて対話をされました。

 20歳の時、原付バイクで日本一周をした齋藤さん。思い出として旅先で人を撮りたいと思い、この時初めてカメラを買ったのですが、当時は人と話すことが怖く風景の写真ばかり撮っていたため、つまらない写真ばかりだったそうです。ただ、この旅を通して、旅の目的は土地ではなく人だったことに気づき、これが本格的に写真を撮ろうと思うきっかけとなりました。また、写真のことは好きでも楽しいでもなく、むしろ嫌いだったこと、コミュニケーションの幅を広げたいという思いから始めたということもお話しくださいました。

 人とのコミュニケーションについては、聾の世界ときこえる世界の間に分厚い壁を感じ、それをなかなか越えることができなかったと言います。しかし、知的障害をもった人たちとの交流によって、コミュニケーションの捉え方がガラリと変わりました。時折微笑みあったり頷きながら、2人で5分から10分ほど言葉もなく抱き合っている姿や、言葉がなくても伝わってくる彼らの優しい雰囲気から、コミュニケーションは文字や手話だけではないと考えるようになったそうです。その話を聞いた日比野さんは「齋藤さんは壁を体感しているからこそ、別の感性が発達しているのだと思います。」と話されました。

 また、齋藤さんは、撮影することを「聾する体を使って、シャッターを押す」と表現し、「ことばの概念や形を解体・再構築することを、写真を通して行なってきた」とお話しされました。そして、授業内で実際に日比野さんのポートレイトを撮っていただきました。はじめに握手をしてから撮影を始めた齋藤さん。撮影する時は被写体に接することを何よりも大切にしているそうです。 

 最後に、コミュニケーションという点において聾者の歴史を見ると、手話を否定された時代があり、またコミュニケーションの方法も音声中心で他の方法が乏しく、とにかく寂しく孤独だったんだなと思う、と考えを話してくださいました。

 人間として、当たり前であるはずのコミュニケーション。齋藤さんは、「コミュニケーションをとって生きる、そこからスタートしたい。」と最後に強く主張されました。

講師プロフィール

写真家

齋藤 陽道

1983年、東京都生まれ。乙女座。写真家。
都立石神井ろう学校卒業。
陽ノ道として障害者プロレス団体「ドッグレッグス」所属。
2010年、写真新世紀優秀賞(佐内正史選)。
2013年、ワタリウム美術館にて新鋭写真家として異例の大型個展を開催。
2014年、日本写真協会新人賞受賞。
キクラゲが好き。