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2020
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ダイバーシティ実践論14 「感性と科学」

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「感性と芸術」をテーマに、3人の講師がプレゼンテーションを行いました。

1.東京藝術大学先端芸術表現科教授・古川聖
古川さんは、脳波が奏でる音楽のプロジェクトに携わっています。脳波音楽と言われてもイメージがわかない人が多いかもしれません。一般的に、音楽と言えば、声や楽器を使います。古川さんは、科学者や研究所と共同で、声や手を介さずに、思考や感情の動きを音に変換する、これまでにない新たな表現の可能性を模索し、脳波で演奏可能な楽器を開発、国内にとどまらず、海外でも演奏活動を行なっています。

2.東京藝術大学学長・澤和樹
澤さんは、藝大が取り組むArts Meet Science(通称AMS)を紹介しました。AMSは、芸術と科学が繋がりを深め、心身ともに健やかな社会に貢献することを目指すプロジェクトで、海外から識者を招いたシンポジウムや、他大学と連携した活動を行なっています。澤さんは「芸術が世の中のために活きるものであることを科学や医学の力で証明したい」と語り、自身が“究極の癒し”と考える「タイスの瞑想曲」をヴァイオリンで披露しました。

3.Tara Ocean財団エグゼクティブディレクター・ロマントゥルブレ
最後は、船で世界を巡り、海洋調査や環境保護活動をしているロマン・トゥルブレさんが登壇しました。16人乗りの船「タラ号」に、科学者とアーティストが乗船し、3週間の旅に出ます。大海原で寝食を共にしながら、乗船者は互いの興味や専門性を分かち合います。その過程で、科学者の話をアーティストがドローイング作品にするなど、共同作業も生まれるのだそうです。継続的な研究も行われ、気候変動や、海洋生物多様性など、様々なプロジェクトの成果はシンポジウム、科学専門雑誌等で発表されています。

プレゼテーションの後、日比野克彦・東京藝術大学美術学部長が加わり、座談会を行いました。日比野さんは、「芸術と科学は、一見、文系と理系のように、異なる領域であるような印象を持つ人が多いけれども、未知のことを追求するということにおいては、両者は共通する部分が大きい」と指摘しました。また、DOORプロジェクトのテーマである「福祉×芸術」にも触れ、「福祉は、人間社会、社会的な課題と捉えることもできる。それらに芸術がどう取り組むのか。表面的ではなく、根本的なところを捉え、追求して、解決の糸口を見つけていきたい」と結びました。

講師プロフィール

ロマン トゥルブレ
Tara Océan財団 エグゼクティブ ディレクター
ソルボンヌ大学で分子生物学の修士2号、HEC-Telecom Parisで修士号を取得した。最高レベルのプロのレガッタ選手でもあり、特に、ニュージーランドのオークランドで行われた2000年と2003年のアメリカズカップに2回参戦。 2003年から2006年までは、北極、南極、シベリアの極地物流を専門とする会社に従事し、極地への冒険または科学探査のロジスティックを担当し、永久凍土層で凍結したマンモスの発見にも関与。2004年以来、Tara Océan 財団の探査プロジェクト統括管理し、2009年からTara Océan財団のエグゼクティブ・ダイレクターを務めている。2017年以来、海洋気候プラットホーム協会の会長でもあり、70以上の機関、財団、企業、社団法人、コミュニティを束ね、気候と生物多様性の問題の解決の中心に海洋を置く事を提唱している。

澤 和樹(さわ かずき)
東京藝術大学長・ヴァイオリニスト
1955年、和歌山市生まれ。1979年、東京藝術大学大学院音楽研究科修了。
ロン=ティボー、ヴィエニアフスキ、ミュンヘンなどの国際コンクールに入賞。イザイ・メダル、ボルドー音楽祭金メダル受賞など、ヴァイオリニストとして国際的に活躍。1990年、澤クヮルテット結成。'96年、指揮活動開始。2004年、和歌山県文化賞受賞。2015年、英国王立音楽院名誉教授。2016年4月より東京藝術大学学長。

日比野 克彦(ひびの かつひこ)
東京藝術大学 美術学部長
個人での作品制作のみならず、より多くの人とワークショップ形式で地域の特性を生かした創作活動を行っている。受け取り手の感受する力に焦点をあて、社会で芸術が機能する仕組みを創出する。現在、全国各地で 18のアートプロジェクトが進行中。

古川 聖(ふるかわ きよし)
東京藝術大学先端藝術表現科教授 藝術情報センター長兼任
高校卒業後渡独、ベルリン芸術大学、ハンブルク音楽演劇大学にて尹 伊桑、G・リゲティのもとで作曲を学ぶ。作曲・音楽理論修士。スタンフォード大学で客員作曲家、ハンブルク音楽演劇大学で助手、講師を経てドイツのカールスルーエのZKM (Center for Art and Media) でアーティスト研究員。作品はあたらしいメディアや科学と音楽の接点において成立するものが多く、1997 年のZKM の新館のオープニングでは委嘱を受けて、マルチメディアオペラ『まだ生まれぬ神々へ』を制作・作曲。多くの受賞歴がある。東京藝術大学先端藝術表現科教授、藝術情報センター長兼任。