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2018
10/20

介護の目的論の理解と対象論

講師: 飯田大輔(社会福祉法人 福祉楽団 理事長)
 昨今ケアについて語る時、地域やコミュニティ・社会的なことから捉えることが多いが、細胞レベル・ミクロレベルで原理から理解し、それが社会とどう繋がっていくかという視点を持つことが大切ではないか、と飯田さん。

ケアの役割は生活を整え、生命力の消耗を最小限にするということ。

人体の構造のことを話すと医学だと思う人が多いが、ある種の類型に陥らないためにも、まず普遍的なことを学ばなければならない。それが生理学解剖学です。

「認識」「生命過程」「生活過程」が影響しあって人間は構成されています。「認識」とは脳のこと、「生命過程」とは消化器官、呼吸器官などの生物としての人間のありよう、「生活過程」とは人間の生活です。 認識が乱れると、生活が乱れる。生命過程が乱れる。すると、認識も乱れる。

認識が乱れると、起こる病気は例えば認知症や統合失調症、高次機能生障害などがあります。例えば食事やお風呂等を忘れてしまう。すると生活が乱れる。生活が乱れると認識が乱れる。日々の生活が生命過程に影響を与える。

医師は生命過程に働きかけることにより、認識や生活を変えようとし、臨床心理士は認識過程に働きかけることにより生命過程や生活過程に力を及ぼします。そして、介護・看護は生活過程を整える実践なのです。また、社会福祉士というのはなにをするかというと、生活過程の外側に社会というものがある。社会に働きかけることにより、生活過程や認識過程に影響を及ぼします。その外側には自然がある。人間は山や海などの自然、満月などの自然の摂理によって影響を受けているのです。

また、人間は二つの側面を持っています。生物体としての人間と生命体としての人間です。生物体としての人間は万人共通の原理です。しかしそれらが生活過程でどう展開されているかは全員異なります。皮膚が作り替えられ身体を清潔に保つのは万人共通ですが、どのように洗うかは皆違います。生物体としての人間と生活体としての人間を両方の視点が必要です。

今日は核論しか言っていない。ケアの根本は解剖生理学であり、表現活動にも共通している。細胞から宇宙まで普遍的なことを学ぶことはとても重要です、と締めくくりました。

 

講師プロフィール

社会福祉法人 福祉楽団 理事長

飯田大輔

1978年千葉県生まれ。東京農業大学農学部卒業。日本社会事業学校研究科修了。千葉大学看護学部中途退学。千葉大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程修了(学術)。
2001年、社会福祉法人福祉楽団を設立。特別養護老人ホーム等の相談員や施設長などを経て、現在、理事長。
2012年、障害のある人にきちんとした仕事をつくるため株式会社恋する豚研究所設立、現在、代表取締役。京都大学こころの未来研究センター連携研究員、東京藝術大学非常勤講師。
主な論文に「クリエイティブなケア実践の時代へ 『ケアの六次産業化』という視点」(週刊社会保障第2782号)。
介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士。