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2018
10/15

アーティストの活動2「老いと演劇 ~認知症の人と“いまここ”を楽しむ~」

講師: 菅原 直樹(俳優、介護福祉士、「老いと演劇」OiBokkeShi主宰)
OiBokkeShiという劇団を主宰している菅原さん。
劇団名の意味は、「老い」「ボケ」「死」。これらを繋げて、オイボッケシと読みます。
マイナスのイメージがある老い、ボケ、死。しかし、特別養護老人ホームで働くうちに、「老い」「ボケ」「死」から得られる大切なこともあるのではないか、ということに気づいたそうです。

お年寄りほど良い俳優はいない、と菅原さん。
一人ひとりの人生にストーリーがあるし、個性的で存在感がある。
介護者もまた、俳優になった方が高齢者とのコミュニケーションを意識的に行うことで良い作用が出てくるそうです。
例えば、認知症の方とコミュニケーションをとったとき、認知症の症状、つまり「ボケ」を正すか、もしくは、それを受け入れるかによってその後の作用が変わってきます。
認知症の人はおかしなことを言ったり、失敗が増えて来たりする。しかし、それは記憶障害、見当識障害という症状があるので仕方がないこと。それなのに、いちいち「ボケ」を正したり、失敗を指摘してばかりいては、認知症の人の気持ちは、かなり傷つけられるのではないか。認知症の方が見ている世界を尊重することが必要なのではないかと思ったそうです。

講義の後半では、受講生とともに、介護施設の中を想定した演劇ワークショップを行いました。利用者役、介護者役に分かれ、「ボケ」を受け入れるか、間違いを正すかのふた通りをやった結果、受け入れられた方がお互い気持ちよくコミュニケーションが取れることがわかりました。

正しい価値観でも、押し付けると人は意固地になってしまう。介護士は、利用者の奥にある気持ちを察することが大事。高齢になると、できなくなることが増えてくるが、今この瞬間を楽しむことができる。演劇は、今この場をともに楽しむこと。すぐに忘れてしまってもいいから、今をともに楽しめる場を作っていこう、という言葉で締めくくりました。

講師プロフィール

俳優、介護福祉士、「老いと演劇」OiBokkeShi主宰

菅原 直樹

菅原 直樹(すがわら なおき)
演出家、劇作家、俳優、介護福祉士。「老いと演劇」OiBokkeShi主宰。平田オリザが主宰する青年団に俳優として所属。前田司郎、松井周、多田淳之介、柴幸男、神里雄大の作品などに出演する。2010年より特別養護老人ホームの介護職員となり、12年に岡山に移住。14年より認知症ケアに演劇手法を活用した「老いと演劇のワークショップ」を全国各地で展開し、同年岡山県にて「老いと演劇」OiBokkeShiを設立する。これまでの作品に『よみちにひはくれない』(2015) 、『老人ハイスクール』(2015)、『BPSD:ぼくのパパはサムライだから』(2016)、『カメラマンの変態』(2017)、『ポータブルトイレットシアター』(2018)。OiBokkeShi×三重県文化会館による「介護を楽しむ」「明るく老いる」アートプロジェクトが現在進行中。

OiBokkeShiは、超高齢社会の課題に「演劇」を切り口にアプローチする演劇ユニット。岡山県を拠点に、高齢者や介護者と共に作る演劇公演や、認知症ケアに演劇的手法を取り入れたワークショップを実施している。