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2018
7/9

当事者との対話12「"障害者のリアルに迫る" 東大ゼミ. その後」

講師: 野沢 和弘(毎日新聞)/御代田 太一(社会福祉法人グロー 救護施設「ひのたに園」生活支援員)/飯田 大輔(社会福祉法人 福祉楽団 理事長)
今回のゲストは、このゼミをきっかけに福祉の世界へ進んだ御代田さん、ゼミの顧問講師を務めている野沢さん、そして、ゼミのゲスト講師として登壇した飯田さんの3人です。それぞれの現在の様子と東大のゼミについて語られました。

「障害者のリアルに迫る」東大ゼミとは、東京大学教養学部にて2014年から行われている全学自由研究ゼミナールの講義です。
障害を持つ当事者をゲストに招き、毎回テーマを設定。当事者と出会い、話を聞き、その人の生きてきた歴史や生活の手触りを知ることを目指しています。
ゲスト講師とのやり取りや講義の準備などはすべて学生が行なっており、福祉の制度や支援のあり方よりも、ゲストの生活の様子や学生が興味のあることを聞き、その場で議論していくようなオープンな場を心がけているそうです。

大学に入った時点では、福祉に全く興味がなかった御代田さん。
つまらなければ帰ればいいや、と軽い気持ちで参加したところ、当事者の話を聞くうちに、どんどんのめり込み、ゼミの中心的な存在となります。
「自分のやりたいことがわからなかった。なんとなく企業に就職するようなレールに乗って進んでいくよりは、関心のある福祉の世界に頭から突っ込んでみよう」と御代田さんは社会福祉法人への就職を決めました。

東大生だけでなく、こうした「リアル」な出会いや体験が与える影響はとても大きなものになります。やはり、当事者との出会いは本やネットで情報として知る、という以上のインパクトがあったようです。
野沢さんは、「東大に入ると、何をしたらいいか目標を見失い、壁にぶち当たる学生が多い。厳しい学歴社会を生きてきた学生に世の中のリアルを見せて、価値観を揺るがされるような体験をしてもらいたい。そこから自分の人生を考えてくれたらいい。」と語ります。
飯田さんからは、当事者を迎えることへのリスクや責任、講義での体験をどうのように実践に繋げられるか、などの指摘も出ました。

御代田さんのように、自ら福祉の世界に飛び込むような実践の方法もあれば、他業種の立場から支援や日々の生活での振る舞いの変化など、個人が実践に移す方法は一つではありません。一人ひとりの小さな実践が、やがて社会の大きな変化となるかもしれないと感じました。

講師プロフィール

毎日新聞

野沢 和弘

野沢 和弘(のざわ かずひろ)
毎日新聞論説委員。1959年静岡県出身。早稲田大学法学部卒業。毎日新聞入社。津支局、中部報道部、東京社会部。薬害エイズ取材班、児童虐待取材班などを担当。科学環境部副部長、社会部副部長を経て、2007年5月から夕刊編集部長を経て、2009年4月から現職。社会保障審議会障害者部会委員、内閣府障害者政策委員会委員、植草学園大学客員教授、上智大学非常勤講師など。主な著書に「あの夜、君が泣いたわけ」(中央法規)、「条例のある街」(ぶどう社)など。

社会福祉法人グロー 救護施設「ひのたに園」生活支援員

御代田 太一

御代田 太一(みよだ たいち)
社会福祉法人グロー 救護施設「ひのたに園」生活支援員
1994年神奈川県横浜市生まれ。東京大学教養学部卒。在学中、障害の世界に関心を持ち、障害のある当事者をゲストに招き講義を展開する「障害者のリアルに迫る東大ゼミ」の運営や、福祉現場での高齢者・障害者の介助を行う。卒業後、滋賀県の社会福祉法人に就職し、4月から救護施設にて勤務。

社会福祉法人 福祉楽団 理事長

飯田 大輔

飯田 大輔(いいだ だいすけ)
1978年千葉県生まれ。東京農業大学農学部卒業。日本社会事業学校研究科修了。千葉大学看護学部中途退学。千葉大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程修了(学術)。
2001年、社会福祉法人福祉楽団を設立。特別養護老人ホーム等の相談員や施設長などを経て、現在、理事長。
2012年、障害のある人にきちんとした仕事をつくるため株式会社恋する豚研究所設立、現在、代表取締役。京都大学こころの未来研究センター連携研究員、東京藝術大学非常勤講師。
主な論文に「クリエイティブなケア実践の時代へ 『ケアの六次産業化』という視点」(週刊社会保障第2782号)。
介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士。