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  • ダイバーシティ実践論
2018
6/25

当事者との対話10「社会(娑婆)で共に過ごし・生きていくということ」

講師: 河角恵子(かわすみ けいこ)
受刑者の伴走支援を行ってきた河角恵子さんと刑期を終え出所された当事者の方、お二人を迎え授業はスタートされました。授業冒頭、河角さんより4つの質問が会場に投げかけられました。
(はい◯、いいえ×で、考えてみてください。)
1.自分の気持ち(うれしかったこと、仕事や人間関係で、困っていることなど)を話せる人がいますか
2.大切にしたい、大切だと思う人がいますか(その人は今も、この世にいますか)
3.あなたのことを、大切だと思ってくれている人、心配に思ってくれる人がいますか。
4.この1週間、違うコミュニティーの人3人以上と会話をする機会がありましたか(職場・家族・幼馴染み・行きつけの店の店員さん・宗教・趣味・学校など)

受刑者と関わっていく中で、この質問をつくったと河角さん。受刑者は、この4つの質問にすべて×がつくことが多いと語ります。なぜそうなるのか。普段私たちには関わりが少ない刑務所という場所を、基礎知識からレクチャーをいただきました。逮捕から裁判〜実刑〜出所に至る司法の流れから、当事者から見た刑務所での日常生活などをお話いただきました。「自由はないけれど、不自由ではないところ」という言葉が印象深く、再犯率の高まりや、高齢受刑者など、近年問題となっている事例もご紹介いただきました。
授業後半では「静かなるアイデンティティの崩壊」と題して、当事者の方に、出所後どのように社会に復帰したのかを語っていただきました。数十年刑務所で生活をすると、出所後、社会の中で自分はなんなのか?自分の輪郭がぼやけるような、社会との接点を見つけられない感覚になるということです。もどるのに4〜5年、時間を要したとのこと、それには、出所者としてではなく自分のことを普通の人として受け入れてくれる昔の仲間や、新しい家族の存在があったからこそだった、とのことでした。出所後のケアが必要となる場面を知りました。
今回のテーマは、加害者、被害者、その家族なども関係していく問題であり、立場が異なる関係が複雑に絡み合います。その人々が同じ社会の中で、どう共生していくのか?大きな問いが私たちに投げかけられました。

講師プロフィール

かわすみ けいこ

河角恵子

キャリアカウンセラーとして
大学でのキャリアデザインの授業や
就職・転職・採用の仕事に関わって参りました。
そういった中の一つとして
2008年に長期刑務所で就労支援スタッフとして
受刑者の伴走支援を行い始めたのをきっかけに、
受刑者・出所者(成人)、出院者(少年)の人たちとの関わりが始まりました。

現在は、
社会教育的活動を通して、
社会である"娑婆(苦界)"で
いつでも・だれでも・どこでも
つどい・まなび・つながり
お互いが尊重し合い
気持ちと時間を共に味わえるような空間を
みんなで創り、継続していける方法を模索しています。