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2020
6/1

ダイバーシティ実践論4「性的マイノリティをとりまく課題と取り組みについて」

講師: 渕上 綾子(北海道議会議員 札幌市東区選出)
日本のLGBT層の割合は約10%。1クラスに3、4人いるという計算になります。LGBTとはセクシャルマイノリティ(性的少数者)のことです。今回の講義では、トランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)であることをカミングアウトしている渕上さんが、自身の生い立ちや議員としての活動を踏まえ、セクシャルマイノリティをとりまく課題を紹介します。

高校まではトランスジェンダーであることをカミングアウトせずに生活していた渕上さんですが、自分で稼げるようになると、「好きなように生きてやる!」と思うようになりました。そこから様々な仕事を経て、現在は政治家として活動されていますが、政治家になるという決断は、自分たちの将来を考えたときに世の中から変えていける方法があるのではないかと考えたためです。

お話の中に、「もしカミングアウトされたら何と答えますか?」という問いかけがありました。答えによっては相手を深く傷つけてしまいます。渕上さん自身、母親に話した際には信じてもらえず、「治らないの?」と言われ、家族の恥のような扱いを受けました。家族に理解してもらうまでに4、5年かかったと言います。学校や職場でカミングアウトしている人は3割弱という統計もあり、しようと思ってもできないのが現実なのです。

それでは、社会には実際にどのような課題があるのでしょうか。教育、差別、医療、相談窓口、法律、防災など様々な場面を取り上げ、そこでの現状と取り組みをお話しいただきました。例えば「同性婚」は、渕上さんが早期実現を目標に取り組んでいる課題の一つです。同性婚が認められたとして、誰かが損をしたり被害を受けたりするようなことはなく、プラスの効果しかないと言われています。また多くの人が賛成しています。にも関わらず進展しないのは、日本の伝統的な家族の在り方や同調圧力と深い関係がありました。そして、現在のコロナ禍においても問題は生まれています。感染者情報の性別表記、パートナーに連絡されない、アウティングのリスク。このような緊急時にはセクシャルマイノリティが守られないことが多いそうです。

今回の講義で、今まで私たちが何となく想像していたLGBTの問題が、それぞれのシーンでどのような課題を抱えているのかを具体的に知ることができました。多様性な社会とは、その人がその人のままでいることのできる社会です。渕上さんは、LGBTだけでなく多様な人が認められて、誰しもが自分らしく生きられる社会を目指して頑張っていきたいと話しています。

講師プロフィール

北海道議会議員 札幌市東区選出

渕上 綾子

1975年 佐賀県生まれ 生まれたときは「大介」
1997年 富山大学理学部生物圏環境科学科卒業
1999年 北海道大学大学院地球環境科学研究科修了
1999年 北海道大学低温科学研究所勤務
2000年 農林水産省北海道農業試験場勤務
2001年 すすきののショーパブ「ららつー」に入社
2004年 戸籍の性別を変更
2005年 名前を「綾子」に変更
2019年 「ららつー」退社 北海道議会議員に初当選